ー   保留地負担ある仮換地の売買;土地区画整理   ー
土地区画整理事業内における保留地負担ある仮換地には、土地権利者の完全な所有権は及ばない。
土地権利者は土地区画整理事業における自治体の担当部署と打ち合わせをせず、各街区番号に示された制限に目を通さずとも、土地家屋調査士さんに依頼をすれば、法務局へ土地の分筆登記はできるのでしょう。但し、各街区番号に含まれる保留地負担に抵触せず、かつ、建蔽率・容積率に抵触しないように仮換地での土地分筆をしなければ、土地利用の経済上の損失を生じます。
土地権利者が有する仮換地の街区番号が複数から成る場合、各街区番号各々に含まれる保留地負担の割合、その地域で適用されている建蔽率・容積率の制限が存します。※ 保留地負担の割合は、各街区番号で違う。

仮換地での保留地を含んだ土地売買を望む土地所有者の中には、土地区画整理事業に係る精算を次の人に対して不確定な負担を残さないために、問題を将来に先送りせず終わらせたい方もいらっしゃいます。
これは土地の分筆が無い場合でも気持ちは同じだそうです。

媒介者が仮換地における保留地負担の説明を出来ないが故に、買主の側から売主に対して、自治体の議会による承認を得て精算を終わらせる事を求められるケースも有ります。
なお、保留地の説明を出来ない媒介者に係る売買契約書には、将来における保留地の精算の有無が無記載のケースがあります。

私が土地権利者をアシストした事例には、自治体を主体とする土地区画整理事業が始まってから既に17~18年が過ぎていた事があります。
その間、自治体からは仮換地に保留地負担が内在する事について、土地権利者に対する通知や説明は一切無く放置されていました。
土地区画整理事業施工地区内の仮換地を分筆したうえで、その一部を第三者と売買する事の可否について、土地権利者の側から自治体へ確認に訪れた事によって、当該自治体の失念が発覚した。
この土地は、宅地の地目と農地の地目が混在した土地の上に建築された住宅が存在する事例でしたが、それでも建築確認を得て住宅が建築されていた(土地所有者には農地法第4条の転用許可を取得していただきました)。

国土交通省;標準地・基準地検索システム  土地区画整理事業の施工区域において、精算の検討には国土交通省の地価公示など公的な資料を用いられたうえで、自治体の議会による承認を得ています。自治体の担当部署の方も、自治体の議会の承認に気を使われています。

※ 土地所有者と自治体の間で係争は無かったため、土地所有者をアシストする形で土地所有者と一緒に自治体の担当部署から話を伺う事が出来ました。土地区画整理事業に係る自治体の担当部署も、言葉は悪いですが、打ち合わせの約束をいただけた機会毎に新しい論点を出される事もあります。

このときに最も大切なのは、土地権利者の意思による「選択の機会」を奪わないこと。

土地権利者として有する仮換地の街区番号が複数から成る場合、各街区の何処で分筆の位置を決めれば土地売買契約の権利者・義務者の双方にとって、経済上の効率が良いか、これを自治体の側にアドバイスを求めても、それは受け付けないため、土地権利者を補佐して自治体との折衝をできる知識・経験を有する人を探す必要性があります。

宅地建物取引業者のアドバイスを受けながら進められていた事例では、二重に課税される土地権利移転の打ち合わせが行われていたケースがあり、「プロだけど専門外」「知り合いだけど知識・経験が無い人」からアドバイスを受けるのは危険だということ。

保留地負担割合ある仮換地の売買

(c)大西  啓貴

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