現在、築50年前後が経過した分譲マンションは、日本の高度成長期の頃、その地域の中心市街地に建築されたものであり、土地だけの資産価値を見れば依然として高く、「建物の機能は古いけど、固定資産税やマンション管理費等で取られるお金は高い」といったアンバランスが見られます。

「分譲マンションの耐用年数は40 ~ 50年で終わる」と流布する専門家の方は、法律上の根拠に基づけば、(失礼ながら)間違いです。財務省  法人税法施行令第13条財務省  所得税法施行令第6条 に基づき法定化される 財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令 ですが、業務の用に供しない建物には財務省令  別表第一「建物」による耐用年数・償却率の規定に対して1.5の係数を使用します。そのため「賃貸マンション」と「業務の用に供しない分譲マンション」では、建物の構造部材の法定耐用年数等の読み方は違います。

元々、有形固定資産には「資産を修理、改良をしながら使い続ける」という考え方があり、「資本的支出」「収益的支出」という概念を日商簿記3級で学びます。CF,構造躯体以外の建物の部位について、裁判所が判断した「一体不可分」の規範力が及ぶのは、財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令  別表第一「建物」が適用される建物の部位です。

【 分譲マンションは、建物の老朽化と所有者の高齢化という「2つの老い」の深刻化を指摘されています。】

法務省は2022年9月2日、老朽化した区分所有建物の建て替え又は修繕を促進するため、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)について法改正の検討を法制審議会に諮問すると発表した。⇒ 昭和37年は、2022年から60年前です。

現行法における建物の区分所有等に関する法律では、区分所有建物の建て替え及び敷地の売却などの決議において、所在不明になっている区分所有権者の議決権は「反対」すると看做されている。

そのため、建物の区分所有等に関する法律を改正する案の目的として、区分所有権者の所在が不明である場合には裁判所に関与させたうえ、所在不明者は決議から除外する仕組みを導入する案が明らかにされている(裁判所へ納付する費用は、マンション管理組法人において立て替え払い?)。また、建物の耐震性に関する強度不足といった公共の安全を害する場合に限って、議決権の行使に関する要件の緩和を認める案など、「権利に対する制限」を乱用されないかなどを含めて、多面的な検討を期待される。建物の区分所有等に関する法律では、建物の建て替えに必要な決議は所有権者の5分の4以上の合意を、共有部分の変更工事には4分の3以上の合意を求めている。この合意要件の緩和の案を法制審議会に諮問される。

また、政令で指定された大規模災害で適用される被災マンション法では、所有権者の5分の4以上の合意で建物の取り壊しや敷地の売却を認めている。被災マンション法の当該要件を、所有権者の3分の2以上の合意に緩和する案が示されている他、大規模災害によって建物の価値が半分以下になった「大規模一部滅失」のケースでは、敷地の売却を決議できる期間を、現行法の1年以内から3年以内に延長できるとする案も示されている。

建物の建て替えに関する法規制の適用;① 市街地の再開発事業の対象なら都市再開発法 ② 建物の耐震不足が理由ならマンション建て替え円滑化法

余談ですが、マンション管理規約に基づくプライバシーのあり方の改善も見られるようになりましたね。以前ならマンション管理費・修繕積立金等の未払い者は、マンション管理組合における定時総会の資料に部屋番号と氏名が明示されていましたが、最近では未払い者があっても部屋番号や氏名を明示せず、未払いの事実と金額だけを報告されるように変わりつつあります。

また、築年数50年前後に建物の外壁修繕工事や防水工事などの大規模修繕工事が行われる場合、その区分所有建物は築70年までを目標に使い続けられるのでしょう。徴収されるマンション修繕積立金等は、建物の老朽化による取り壊しの際にも使われます。

区分所有建物の老朽化と所有者の高齢化