不動産売買の適正価格の考察
業務の用に供する建物では、資本的支出又は修繕費に係る費用は全てB/SやP/Lに反映されます。他方、業務の用に供しない建物では、衛生設備の交換やフローリングの張替えなどがされてもB/SやP/Lを作成しないため、かかった工場費用やリフォーム時期を含めて、総務省;固定資産税の課税標準額ではハッキリしない。
リフォームした物件が売りに出される場合に「売値の殆どは、建物の価格です」と言われる場合は、元々の固定資産税の課税標準額に、今回のリフォーム代金を上乗せした金額を言われるなど、裏に隠されている理由を読み取れます。
区分所有建物の買主希望者にとっては、主要構造部や建具区分には勝手に手を付けられない事を理解のうえ、内窓(二重サッシ)、衛生設備、石膏ボードをスクリューパッキン工法で付ける場合の隙間に断熱材を付けるなど、スケルトンリフォームから手を付けられる事にメリットを感じられる人も多いのでしょう。石膏ボードをGLボンド工法で付ける場合の隙間に断熱材を付けられるかは、分からないです。
また、外壁塗装や防水工事は17年から18年前後で大規模修繕工事が行われますが、これは外壁材自体の法定耐用年数ではなく、塗料や防水材の耐用年数は長いものでも20年前後であり、そこから1割程度のマージンを勘案されています。
売主が媒介会社から言われる内容に、「お客様から経費が高い」と言われる事があります。これは媒介会社にとっては、買主希望者から言われた事を何も考えずに、ただ右から左へと受け流しているのでしょう。
この場合は、媒介会社を通じて「経費が高い」と感じた理由を聞き出して下さい。実際には売りには出していない(持ってはいない)駐車場代などを含めて管理費が高いと言われているケースもあります。
区分所有建物では管理規約をお目通し下さい。管理費、修繕積立金など、きちんと管理されている管理組合法人であれば、係数に共通点が読み取れます。
不動産売買の適正価格の考察
売主が1番目に望む売却希望価格は、適正価格であって、自治体から毎年送られてくる固定資産税・都市計画税の納付通知書に記載されている価格に基づき、一般的には固定資産税の課税標準額を0.7で割った金額です。
売主が2番目に望む売却希望価格は、上記1を下げて固定資産税の課税標準額の付近の金額です。
売主が3番目に望む売却希望価格は、固定資産税の課税標準額よりも安い金額に突入し、売主はここから定期的に売値を下げていくのでしょう。
但し、区分所有建物の立地条件など、古い建物には中心市街地に建築されている事が多く、利便性などから建物だけでは考えられない。
業務の用に供する建物の主要構造部及び建物の部位(但し、建物附属設備以外)の法定耐用年数・償却率は、財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一「建物」から読み取れます。
他方、業務の用に供しない建物の部位の耐用年数・償却率は、(独)住宅金融支援機構 住宅技術基準実施細則には規定しない。財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一「建物」は、業務の用に供しない建物には1.5の係数を使って目安を読み取れます。
そうすると、業務の用に供しない区分所有建物の主要構造部は、SRC造、RC造は70年程度、木造は33年程度、建物の主要構造部以外の建物の部位は当該財務省令 別表第一「建物」(1.5の係数を掛ける)、「建物附属設備」(1.5は使わない)はそのまま読み取れます。他方、総務省;固定資産評価基準「家屋」の建具区分は、木製・合成樹脂製、金属製の肉厚3mm以下は法定耐用年数として70年は保持しません。
・不動産を取得したことによる不動産取得税の課税 自治体へご確認下さい。
・不動産を譲渡して所得を得たことに伴う所得税の課税 税務署へご確認下さい。
・不動産固定資産税・都市計画税の課税 1月1日現在の不動産所有者に課税されます。不動産所在地の自治体へご確認下さい。
業務の用に供する資産
a)(租税公課)総務省;地方税法第388条第1項に基づく固定資産評価基準「土地」「家屋」「償却資産」
b)(減価償却資産)財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令は、減価償却費(費用科目)としてP/Lに反映されます。固定資産としてはB/Sに反映されます。なお、減価償却税という税目はありません。
ー 保留地負担ある仮換地の売買;土地区画整理 ー
土地区画整理事業内における保留地負担ある仮換地には、土地権利者の完全な所有権は及ばない。
土地権利者は土地区画整理事業における自治体の担当部署と打ち合わせをせず、各街区番号に示された制限に目を通さずとも、土地家屋調査士さんに依頼をすれば、法務局へ土地の分筆登記はできるのでしょう。但し、各街区番号に含まれる保留地負担に抵触せず、かつ、建蔽率・容積率に抵触しないように仮換地での土地分筆をしなければ、土地利用の経済上の損失を生じます。
土地権利者が有する仮換地の街区番号が複数から成る場合、各街区番号各々に含まれる保留地負担の割合、その地域で適用されている建蔽率・容積率の制限が存します。※ 保留地負担の割合は、各街区番号で違う。
仮換地での保留地を含んだ土地売買を望む土地所有者の中には、土地区画整理事業に係る精算を次の買主に対して不確定な負担を残さないために、問題を将来に先送りせず終わらせたい方もいらっしゃいます。
これは土地の分筆が無い場合でも気持ちは同じだそうです。
媒介者が仮換地における保留地負担の説明を出来ないが故に、買主の側から売主に対して、自治体の議会による承認を得て精算を終わらせる事を求められるケースも有ります。
なお、保留地の説明を出来ない媒介者に係る売買契約書には、将来における保留地の精算の有無が無記載のケースがあります。
私が土地権利者をアシストした事例には、自治体を主体とする土地区画整理事業が始まってから既に17~18年が過ぎていた事があります。
その間、自治体からは仮換地に保留地負担が内在する事について、土地権利者に対する通知や説明は一切無く放置されていました。
土地区画整理事業施工地区内の仮換地を分筆したうえで、その一部を第三者と売買する事の可否について、土地権利者の側から自治体へ確認に訪れた事によって、当該自治体の失念が発覚した。
この土地は、宅地の地目と農地の地目が混在した土地の上に建築された住宅が存在する事例でしたが、それでも建築確認を得て住宅が建築されていた(土地所有者には農地法第4条の転用許可を取得していただきました)。
国土交通省;標準地・基準地検索システム 土地区画整理事業の施工区域において、精算の検討には国土交通省の地価公示など公的な資料を用いられたうえで、自治体の議会による承認を得ています。自治体の担当部署の方も、自治体の議会の承認に気を使われています。
※ 土地所有者と自治体の間で係争は無かったため、土地所有者をアシストする形で土地所有者と一緒に自治体の担当部署から話を伺う事が出来ました。土地区画整理事業に係る自治体の担当部署も、言葉は悪いですが、打ち合わせの約束をいただけた機会毎に新しい論点を出される事もあります。
このときに最も大切なのは、土地権利者の意思による「選択の機会」を奪わないこと。
土地権利者として有する仮換地の街区番号が複数から成る場合、各街区の何処で分筆の位置を決めれば土地売買契約の権利者・義務者の双方にとって、経済上の効率が良いか、これを自治体の側にアドバイスを求めても、それは受け付けないため、土地権利者を補佐して自治体との折衝をできる知識・経験を有する人を探す必要性があります。
宅地建物取引業者のアドバイスを受けながら進められていた事例では、二重に課税される土地権利移転の打ち合わせが行われていたケースがあり、「プロだけど専門外」「知り合いだけど知識・経験が無い人」からアドバイスを受けるのは危険だということ。
不動産売買の適正価格の考察
(c)大西 啓貴
建築・不動産会社やメーカーは、総務省;地方税法による固定資産評価基準、財務省;減価償却資産の耐用年数等に関する省令を熟知し、お客様に説明します。国税庁による主な減価償却資産の耐用年数表は、財務省令から数多くの減価償却資産と細目をカットし、償却率・保証率を全部カットしたもの。償却率の無い法定耐用年数は存在せず、資本的支出に係る減価償却では財務省令を適用します。